希少技術で染められた当社オリジナル小紋特集!

野瀬 達朗

商品仕入

野瀬達朗

希少技術で染められた当社オリジナル小紋特集!

いつも京都きもの市場のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

京都きもの市場の商品仕入担当、野瀬でございます。

いよいよ木々の葉も色づきはじめ、本格的に紅葉狩りが楽しみな季節になりました。皆様は素晴らしい秋晴れつづきの毎日をいかがお過ごしでしょうか。

私はと言いますと、少し前に発注しておりました当社オリジナルデザインのお着物が素晴らしい仕上がりで手元に届きましたので、今回のブログではその一部をご紹介させていただきます!

まずご紹介する小紋は、京都の老舗メーカーの手摺り友禅でございます。

手摺り友禅とは、染料の濃度で濃淡を表現する一般的な友禅とは異なり、何枚もの型紙と特殊な刷毛を用いて、色を摺り込ませることで一つの柄を表現する技法で、平安末期頃から存在する京友禅最古の技法と言われています。

摺り込みの回数によって濃度を変化させることで、まるで絵画のような繊細で多彩な柄を表現がすることが可能です。

こちら(↑)は、手摺りに用いる刷毛で、主に鹿の毛が用いられます。

柄の大きさや摺りぼかし等、表現や技法により様々な大きさの刷毛を使い分け、更に、一度使うと染料が中まで染み込むため、色ごとに刷毛を変える必要もあるそうです。

染色メーカーさんでは非常に多くの刷毛が必要なので、刷毛の管理だけでも大変な労力がかかります。

こちら(↑)は、実際に手摺りを行っている途中の様子で、よく見ると柄が未完成なのが分かります。

白生地を長板に歪みなく張り、その上に文様が彫られた型紙を置いてから刷毛で染料を摺り込んでいきます。

一つの文様を表現するために、色彩の数によっては7~8枚もの型紙を使うことがあります。加えて、濃淡を表現するために、濃さによっては1色につき4~5回も重ねて摺り込むこともあるそうです。

更に、手刷り友禅に限らず、小紋は1枚の型だけで同じ柄を繰り返し染めるのが一般的ですが、今回オリジナル発注した小紋は、二型送り小紋といって異なる型を2~3枚用いて染められるため、紋丈(紋紙一回転分の柄の長さ)が一般的な小紋よりも長くなります。

当然、この紋丈が長いほど柄を染めるのに手間とコストがかかりますが、単調にならず動きのある着姿になるため、普段着としてだけでなく、ちょっとしたイベントなどでも活躍するオシャレ着としても人気が高いです。

今回発売する二型送り小紋に用いられた型はメーカーさん既存の型ですが、ベースとなる生地や手摺りの配色などを当社がデザインして制作していただきました。

小さな文様一つ一つにこれだけの手間と労力がかけられていることを知れば、より一層愛着が増しますよね。特別な愛着をもって長く広く楽しんでいただける手摺りの小紋を皆様のコレクションの一つにいかがでしょうか?

 

続いてご紹介する小紋は、染作家の松田素尚子さんの絹引き染め小紋です。

※お写真(↑)は、松田素尚子さんの作品ですが当社で発売するオリジナル商品とは異なります。

絹引き染め(別名 シケ引き染め)とは、古くから伝わる京友禅の手描き染め技法の一種ですが、手描き染め技法の中でも大変に希少な技術です。技術の伝承が困難なため「幻の技法」とも言われています。

「シケ」というのは、繭の外皮から引き出した糸を意味し、そのシケ糸で織ったかのように細く繊細な模様を染め付けることから 「シケ引き」と命名された大正時代に発明された技術だそうです。

長い反物を板に張り、特殊なハリのある櫛状の刷毛で染料を引いて染めていくのですが、もちろん人の手で引いているので線の強弱や染料の濃淡の加減は職人独自のもので、この世に一つとして同じ作品はなく、それがまた味わい深さを引き出しています。

松田素尚子さんが使用する刷毛は、サンバーという東南アジアに棲息する大型の水鹿の毛でつくられたものです。

しかし、現在このサンバーは絶滅危惧種となっており、ワシントン条約で保護されているため捕獲・輸出が禁止されています。つまり、技術自体が伝承困難なだけでなく、現在日本に存在する数少ないサンバーの刷毛が劣化して使用不能になっても新しく刷毛を調達できないので、このシケ引き染めは日本から完全に絶滅してしまう危機に瀕しているのです・・・

こちら(↑)の刷毛も何十年も前のものでしょうか、見るからに年季が入っていて大切に扱われているのが分かりますね。

一般的な柔らかな毛でできた刷毛では塗り絵のように塗りつぶすイメージで染めますが、サンバーの刷毛は一本一本の毛が堅く太いため、塗りつぶすというよりは線を重ねて模様のように染め付けていくイメージです。

同じ刷毛でも、毛の部分の並べ方が異なっていたり、ハサミで切ってすかしていたりして、線の太さから濃淡、線と線の間隔などを変えて様々な線を表現するそうです。

また、刷毛につける染料の量も、その刷毛の癖や天候・湿度によって変えなくてはなりません。

生地の外の板の上に刷毛を置いたら、息を止めて一気に横に引いてきます。少しでも息をしてしまうと、線がずれて真っすぐな線が引けないそうです。刷毛を寝かせる角度や動かすスピードにも慎重な調節が必要です。

何色も何色も重ねて幾筋ものラインで染め上げるため、色に奥行きと表情がつき、優しく上品なあたたかみが出ます。

一本でも他と同じように真っすぐな線を引けなければ作品を台無しにしてしまいますし、一度染め始めればやり直しもきかないので、職人さんのフリーハンドの腕と集中力がモノをいう大変な作業ですね。

あざやかな熟練職人の刷毛づかいを動画でも撮影してきました。貴重な映像ですのでご覧ください!

刷毛が生地の上を勢いよくスッと動く様子は、爽快感があって気持ち良いものですが、事前に聞いたお話を思い出すと、つられてこちらまで息を止めて集中してしまいました・・・!

こちらの小紋は豪華絢爛ではないかもしれませんが、職人の細かな手仕事ならではの表情の豊かさや味わい深さがあって上品で優雅に着ていただけますので、日常使いだけでなく、ちょっとしたイベントやお出掛けシーンでも大活躍間違いなしです。

ここまでの説明で、近い未来に失われてしまうかもしれない技術で染められる絹引き染め小紋の希少価値は大変なものということがお分かりいただけたかと思います。技術が完全に失われて手に入れられなくなる前に、皆様のコレクションに加えてみるのはいかがでしょうか?

今回ご紹介した当社オリジナルの手摺り小紋絹引き染め小紋は、近日中に展示会または店舗にて販売開始いたします。オンラインでの販売は行っておりませんので、ご興味がございましたら是非お近くの展示会または店舗までお越しください!

 

それでは、今回も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

日毎寒さがつのりますので、お風邪など召されませんよう気をつけてお過ごしください。

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