知っておきたい!異国情緒ただよう正倉院文様

実店舗「京都店」 佐野巨明

実店舗「京都店」

佐野巨明

知っておきたい!異国情緒ただよう正倉院文様

いつも京都きもの市場のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

京都店の佐野でございます。

最後にブログを更新したときから、随分と時間が空いてしまいました…皆様いかがお過ごしでしたか?良い年末年始休暇でしたでしょうか?

遅ればせながら、昨年は大変お世話になりました!!!多くのお客様に本ブログをご覧いただき、様々なお声をいただけたことで、ブログ更新も回を重ねるごとに楽しくなり、わたくし自身の大きな励みになりました。ありがとうございます。

今年も本ブログで、皆様にとって少しでも有用な情報を発信できるよう精一杯尽力いたしますので、今年も是非本ブログに遊びにいらしてください。今年も一年どうぞよろしくお願いいたします!!!

 

さて、今回は皆様にご好評をいただいております「知っておきたい!」シリーズをお送りしたいと思います!(今回は第3作ということで勝手にシリーズ化しました。笑)

過去にお送りした四季を感じる着物の季節柄(草花編)縁起の良い着物の吉祥文様では、読んでくださったお客様から「ためになった」「良い復習になった」「改めて整理できた」など、様々な嬉しいお声をいただきました。

そこで、調子に乗ったわたくしは、今回も大好評シリーズの最新回として正倉院文様についてまとめてみましたので、よくご存じの方も、あまり詳しく知らないわ~という方も、是非一緒におさらいしましょう!

 

正倉院文様とは

そもそも正倉院とは、奈良時代(天平勝宝8年)に建てられた東大寺の大蔵(朝廷の倉庫)で、夫の聖武天皇が亡くなり悲しみに暮れていた光明皇后が、天皇のご冥福を祈念して天皇の愛用品を献納したことがはじまりとなって、それ以来、東大寺の大仏開眼の儀式で使われた品など奈良時代を代表する宝物の数々が厳重に保管されるようになりました。

正倉院文様は、この正倉院に保管されている、奈良時代を代表する工芸品や染織品に施された文様のことで、時代名から天平文様と呼ばれることもあります。日本古典文様の中で最古に位置づけられ、格調の高い文様です。

正倉院は「シルクロードの終着駅」と言われるように、ローマ、ペルシア、インド、中国など大陸から持ち込まれた宝物が元となっているため、国際色豊かな異国情緒あふれる文様なのが特徴です。

今回は、各文様の起源となったといわれている地域別にご紹介したいと思います!

※あくまでブログ用の佐野独自リサーチですので、学術的に諸説ある場合もございます、素人リサーチとして何卒ご容赦くださいませ。

 

中国由来の正倉院文様

唐花文(からはなもん)

唐花文は、特定の花ではなく複数の空想の花が重なり合った花の文様です。唐花に葉やつぼみを付けて、蔓草(つるくさ)のように描かれた文様も多いですね。

唐花文は日本で古くから愛され和様化されたこともあり、日本古来の和柄と思われがちですが、実は中国由来です。

華やかでパッと映えるので、コーディネートに取り入れやすく、オシャレにまとまりやすい、なんとも優秀な文様なのでわたくし個人的にも大好きな柄です!

 

蜀江文(しょっこうもん)

蜀江文は、八角形と四角形を隙間なく連続的につなげた幾何学的な文様です。中に唐花をはじめとする様々な文様が描かれることで多様なパターンが存在し、現代風にアレンジされたものもあります。

蜀江は、中国の三国時代を形成した国の一つである「蜀」の首都を流れる河で、この地域では古くから良質の絹織物を産出し日本にも輸入され「蜀江錦」としてもてはやされたことから、蜀江文と呼ばれるようになったそうです。

現在でも格調高い文様として、豪華絢爛な錦織に施されることも多く、袋帯や飾り袱紗などに用いられ、広く愛されています。

 

ペルシャ由来の正倉院文様

連珠文(れんじゅもん)

連珠文は、小さく丸い玉を連ねて描かれる文様で、帯状に続けたものを珠文帯、円文の縁に連珠文をめぐらせた円形のものを連珠円文と呼びます。円内に獅子や騎馬人物、鳥獣などが描かれるデザインもあります。

古代ペルシャ(ササン朝周辺)で作り出された文様で、織り文様として多用されている中国を経由して日本に伝えられたといわれています。

 

花喰鳥文(はなくいどりもん)

花喰鳥文は、鳳凰や鴛鴦(おしどり)などの異国の鳥類が草花や花枝などをくわえた姿を描いた文様で、奈良時代の流行を経て藤原時代には和様化された松喰鶴(まつくいづる)も広く用いられました。

「ノアの箱舟から飛び立ち、オリーブの枝葉をくわえて戻ってきた鳥と同様に幸せの兆し」を表すとされ、縁起の良い吉祥文様として用いられてきたそうです。

 

その他の地域由来の正倉院文様

忍冬文(にんどうもん)

忍冬文は、スイカズラに似た植物を描いた、花文と唐草文が結合したような文様で、古代ギリシャのパルメット文様が日本に伝来する過程で変化し生まれたそうです。

北アフリカ・シリア・メソポタミア・小アジア・ペルシャ・インド・東南アジアなどの様々な地域で広く使われており、中国では六朝時代に仏教美術に盛んに用いられ、日本でも飛鳥~奈良時代に流行しました。

 

葡萄唐草文(ぶどうからくさもん)

葡萄唐草文は、葡萄の蔓を主軸に実や葉などで構成される文様で、起源となったアッシリア(現在のイラク北部周辺)やその周辺地域では古代から葡萄に対する信仰があり、不死の生命の象徴とされていました。

紀元前4世紀頃に古代ギリシャに伝わると、規則的な唐草形式の文様に変化し、キリスト教の寺院の内部装飾や石棺の装飾に用いられるようになったそうです。

2~4世紀頃には中国にも伝わり、古鏡の装飾や仏教美術に広く用いられ、飛鳥時代になると日本に伝わり、日本の仏教美術においても豊饒をあらわす吉祥文様として広く愛されてきました。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?新しい発見はございましたでしょうか?

異国情緒ただよう優美でエキゾチックな正倉院文様の魅力は、単純なデザインの美しさだけではなく、遥か彼方で生まれ、様々な文化を巡りながらシルクロードを旅して伝えられたという神秘的な背景にあると思います。

着物愛好家の間でも根強い人気を誇る正倉院文様には、人々のロマンを駆り立てる不思議な引力があるのではないでしょうか。

まだ正倉院文様のアイテムをお持ちでない方は是非挑戦してみてくださいね。歴史を身にまとっているようなちょっと粋な気分でお出掛けを楽しめること間違いなしです!!

それではまた次回の更新をお楽しみに。大雪が降ったりとまだまだ寒さが続きますが、皆様お気をつけてお過ごしくださいませ。

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【京都店主任】 出張族から一転し、実店舗へ赴任しました!出張手当はもらえなくなったけど、今日も元気に着物という広大な宇宙を旅します。

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