いつも京都きもの市場のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
京都きもの市場の商品仕入担当、野瀬でございます。
桜前線がすっかり北上し、春の陽気につつまれる毎日となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は希少な本場黄八丈を仕入れることが出来たので、皆様に一部ご紹介したいと思います!
店舗および展示会での対面販売のみのお取り扱いになりますので、ご興味のある方は是非お問い合わせください。
黄八丈とは、伊豆諸島の一つである八丈島で織られる、黄色・樺色・黒色の3色を基調とした草木染の絹織物です。
黄八丈は、着るごとに生地が体になじんでくる着心地の良さを持ち、かつては普段着として愛用されましたが、近年では生産者の減少に伴い希少価値が増していることもあり、「あらゆる着物を知り尽くした人が最後に辿り着く着物」とも言われるそうです。
染料は島内に自生している特有の植物のみで作られており、黄色はコブナグサ・サカキ・楿(カツラ)の生葉を焼いた灰汁、樺色はタブノキ・マダミや椎の木を焼いた灰汁、黒色は椎の木の樹皮と泥で染め出します。
かつては黄色が主流だったことから、「黄八丈」の名称で親しまれましたが、現在は黒色が大半を占めており、黒八丈は特に手間のかかる染色方法で糸を染め上げています。
椎の木や皮を煮詰めた煎汁(フシ)に翌朝まで漬け込み、天日乾燥させますが、この煎汁漬けという作業を黒八丈では30回ほど繰り返します。1回ごとに染料を新しく入れ替えるので、大変な作業ですね。
30回にも及ぶ煎汁漬けが終わったら、鉄分が含まれる沼泥を濾過した上澄み液で発色させ、黒八丈特有の艶のある黒色に糸を染め上げます。
こちら(↑)のたつみ綾は、伝統工芸士である西條吉弘氏に丁寧に染め上げられた糸を、八丈島の織子さんが4枚の綜絖(そうこう)を巧みに操り手織りする綾織の一種で織られた作品です。
西條吉弘氏の染色工程は先述した工程だけでなく、染料に使用する草木を採取することから始まります。早朝から山に行き、トラック一杯分の草木を採取し、工房に持ち帰り、樹皮を剥いでチップ状に裁断します。
染色には大量の煮汁が必要となるので、これらの作業は林業とまるで変わらない大変な重労働なのです・・・!
こちら(↑)のまるなまこも綾織の一種で、菱型が二重になった紋様となっています。鳶色(とんびいろ)をメインに、黒と刈安(かりやす)の黄色が絶妙にバランスの取れた配色ですね。
こちら(↑)は、しっかりとした打ち込みで織り上げられた八寸名古屋帯です。黄八丈特有の光沢感と艶感が美しいだけでなく、草木染めによる柔らかく深みのある黒色が作品に厚みを出しています。
いかがでしょうか?本場黄八丈の魅力にどっぷりハマっていただけましたでしょうか?
黄八丈はその高級感とは裏腹に、非常に丈夫で色落ちしにくく、長く日常的に楽しむことのできるお着物としても人気を博しています。
実際に実物をお手に取ってご覧いただくとまた違った見え方もしますので、是非ご興味がございましたら一度お近くの店舗または展示会会場までお越しください。(直近の展示会開催情報はこちらから)
大型連休ももうすぐそこまで迫っております、皆様体調にお気をつけて楽しい休暇をお過ごしください!
京都きもの市場
野瀬達朗

野瀬 達朗

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