【吉織】吉村織物さんへお邪魔してきました!ぬれぬきの帯とは一体!?

どうも皆様、佐野でございます。

久しぶりの更新と相成りました。
その分、ネタはしっかり温めてホカホカにさせていただいております。

そんな今回の内容はと申しますと、先月お邪魔させてもらった西陣の織元である吉村織物さんをご紹介いたします。
わたくしが小さい頃は西陣のそこかしこで聞こえてきていたガッシャンガッシャンという織機の音も今ではとんと聞こえなくなりました。

織元の聖地でもある西陣がそういう状況なので、もはやガッシャンガッシャンという機音は絶滅危惧種とも言える音色となってしまっております。とても悲しく、そして由々しき事態です。

そんな諸行無常の響きが聞こえる西陣で、今でも内機で声高らかに織機の音を響かせてくれておられるのがこの吉村織物さんなのです。

大変に素晴らしいモノ作りをされておられるので、ほんの一部ですがご紹介させてください。

吉村織物(平野屋利七)


なんとも長らく織物業を営まれておられまして、創業はなんと明治初年
文明開化の音を聞きながら、ざんぎり頭の初代吉村利七さんが屋号”平野屋利七”として西陣で旗を掲げられました。

初代の生まれは江戸時代末期の1848年と、「開国しなければ攻撃する。」と言い放ったにっくきペリーが来航するよりも少し前とのことなので完全にペリー世代です。ペリー世代の方々は、鎖国から開国、江戸末期から明治維新とそれはもう時代がうねって仕方ないときの激動動乱の中を生きてこられたわけなので、大変に志を高く持たれていたことと存じます。

だからこそ、時代を超えに超えて今なお心ときめく独創的なものづくりが達者に行われているというわけなんです。

そんな志の高い、独創的で上品な品をつくる帯屋さんとして問屋業界では通称「吉織」で親しまれております。

内機

動画を撮って参りましたので、この音を是非に楽しんでいただきたかったわけであります。
規則正しく鳴り続けるこの大谷翔平のような真面目さとストイックさ。作品の人々を魅了し惹きつける卓越した超絶技巧はまさに大谷翔平。リスペクトしてやみません。

この機音が、呉服という一昔前ではメジャーとも言える産業で時代を築き、栄華を極め、一世を風靡した言うなれば西陣のsoul soundというわけなんです。

昔はこの音が当たり前の日常だったので、もはやうるさいとも思わなかったものですが産業の盛衰を地元の変化に見られるというのはなんとも生まれ冥利に尽きますね。
今ではノスタルジーを強く感じて昔を懐かしむと同時に、この音を守っていければなぁなあんていっちょまえに思う自分もいるのです。

ぬれぬき


吉織さんの作品のひとつでとても有名なのが、この”ぬれぬき”という技法を使って作られる帯ですね。

この”ぬれぬき”と呼ばれる技法は、これはもう大昔ともいえる室町時代、時は足利家が実権を握っていたあの日あの時。位の高い公家や武家が嗜み楽しんでおられた能の装束に使われていました。

この「長絹(ちょうけん)」と呼ばれる薄手の羽織りが”ぬれぬき”によって作られていたようです。

そしてこの”ぬれぬき”は、なんと織る前の糸に水を含ませて織物をしていくわけなんです。

一般的な生地になる絹糸は、糸を幾つか撚り合わせて一本の糸が作られています。ほとんどの着物や帯は撚糸が使われています。

吉織さんでも例に漏れず撚糸が使用されています。皆様方ご存じの通り、撚糸は基本的には水が大敵なんです。水に触れてしまうと糸同士が引っ張り合い生地が変化して、無慈悲にも縮んでしまうという居たたまれない状態になってしまうわけなんですね。

では逆に、この性質を利用してみてはどうなんだい?

という逆転の発想で生まれたのがこの”ぬれぬき”という技法なんです。
しかもですね、吉織さんはこれをまさかの帯とマッチさせ昇華させ類型を破られたのです。

サラッと弱点でもある水を利用すると申しましたが、もちろんおいそれと織れるものでは御座いません。それはもう織るのが極めて難しく本当に限られた極々少数の職人さんにしか手が付けられません。

なんでも緯糸(よこいと)に濡れた糸を使い、その糸が乾いた際に組織が引っ張り合う変化を想定するみたいです。

そうすることで、細かい織なんですが少し糸同士の隙間ができ、軽やかで腰のある、他の滑らかな光沢ある絹織物とは違った風合いが出来上がるというわけですね。


この通気性抜群のシャリ感ある仕上がりがたまりません。大変に軽くて蒸れにくく締めやすい帯なんです。もちろん袷の時期にも結んでいただけるというんだから懇到極まれりな帯なのです。
そんな素晴らしい技術もさることながら、柄も非常に品よく洗練されておりアッパレとしか言いようがないのです。

最後に

織れる職人さんが本当に限られているので、吉織さんの作品はそれほどマーケットに出回りません。
京都きもの市場の店舗や展示会にもないことの方が多いくらいです。なので、見られたら、出逢えたらラッキーだと思ってじっくりと、この写真や文だけでは伝えきれない良さを感じてもらえれば幸いです。

吉村織物さんの公式HPです→こちら

ではまた次回の更新をお楽しみに。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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佐野巨明

佐野巨明

【京都店主任】 出張族から一転し、実店舗へ赴任しました!出張手当はもらえなくなったけど、今日も元気に着物という広大な宇宙を旅します。

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